多摩川のトランセクト調査 クマソほか
このところ定期的にやっている多摩川土手のトランセクト調査の話題です。
英国を本部とするEuropean Butterfly Monitoring Scheme - eBMS という市民参加型の蝶のモニタリングプロジェクトがあり、日本もこれに参加していて日本チョウ類保全協会が元締めとなっている。担当区域の一定のコースを定期的に歩いてその間に見つけた蝶の種類と頭数を記録するという地道な調査活動であり、多摩川の中野島の土手沿いの約1.5キロの区間の指定コースを先輩お二人と担当している
地道な調査である。今日は選挙に行って(10月27日)その足で多摩川土手を調査したが開始時の気温は25度だったのが後半は32度まで上がり、それとともに現われる蝶が爆発して特に、イチモンジセセリ、ウラナミシジミ、キタキチョウは凄かった。なにせ、コースの1.5キロで見つけて数えて記録したイチモンジセセリだけでも143個体であった。結構見落としているだろうと思うほどたくさんいた。
そんななかで今まで調査では記録がなかったクロマダラソテツシジミのメスが土手のセンダングサで吸蜜しているのに出会えた。尾状突起(後翅の尻尾)も傷んでなく新鮮な個体。オスだったらウラナミシジミと見間違っていたかも知れないので同じコースを定期的に歩いて新たな発見があるのは楽しい。
↓ ウラナミシジミのオス。ボロ個体が多い中で新鮮な個体も混在している
↓ 同ウラナミシジミのメス。青に光る微妙な角度を捉えた
↓ 見る機会の増えたアオスジアゲハ
このクロマダラソテツシジミの行く末が気になりますねー。本来ならば、例のご近所のお家に植えてあるソテツに戻って産卵するのでしょうが、朝晩の気温が低下するこの頃では幼虫がうまく育つとは思えません。ひょっとすると、このメスは成虫のままで越冬するのでしょうか?
そうなんです、どうなるのかよくわかりません。3年前に初めてこのあたりでは10月から2ヶ月足らずの期間ですがいきなり発生して、2年前には現われず、そして昨年は発生しました。今年もご覧の通りです。温暖化傾向は明らかなのでこれからは毎年のように発生しそして暖地のように冬もなんとか越えられるようになるのかも知れません。
しかし、少しの気温の低下でも影響が大なのでこの冬、いかなる形であれ越冬できる可能性があるのかはわかりません。もともとの発生地である暖地では「越冬」そのものがないので年中だらだらと切れ目なく発生を続けています。この頃、多摩川土手で交尾しているクマソを見るにつけ、今ソテツの新芽、若葉があるわけでもないので産卵するのかどうか(本能はどう指示するのだろうか? 孵化した際に新芽があればよいとはいえ・・・)、彼らにとっての冬という未知の環境で勢力を拡大するための試練に遭っていることは確かです。