生田緑地 セナガアナバチの狩
今回はセナガアナバチの狩の現場。生田緑地で見つけたとんでもない寄生蜂の話題です。
なんだろう?青いハチみたいなのが茶色いバッタみたいなのに襲いかかっている?という感じがするが、実はこれはセナガアナバチが「ゴキブリ」を襲っているところ。そして、ゴキブリの触角は奇妙に短く(先の細くなったなが~い触角を振り動かすイメージはなんとなくいや~な感じで脳に焼きついている)、ちょん切られているように見える。このハチは他の昆虫に寄生して生きてゆく寄生蜂の仲間に属していてなんとセナガアナバチのメスはゴキブリの幼虫に緻密な計画のもとに、2回に亘って麻酔を針で打込み正常な逃避行動がでず愚鈍な状態に陥れる。触角はゴキブリにとって五感のセンサー・命綱ともいえる重要な役割を果たしていてこれを切られるとまともに行動できなくなってしまう。
その後、残っている触角を引っ張られて、ゴキブリは巣穴まで歩かされたあげくに産卵され孵化したハチの幼虫が蛹になるまでは生餌となって生かされる・・・なんとも、この本能のなせる技もすごいが、研究・発見した人間もすごい。束の間、あの憎たらしいゴキブリがなんとなく不憫にも思えた。末尾に、以前の記事で一部を引用したWikipediaの記載をかいつまんで紹介した。
何回か取り上げているミドリセイボウも寄生蜂であり、この世界は驚異に充ち満ちている。
⇒ 動画 セナガアナバチの狩
↓ ミドリセイボウ。こちらは別種の特定のハチに寄生する (アーカイブ 2024年8月8日 川崎市)
↓ セナガアナバチに戻って、運命の出逢いの瞬間。ゴキブリの命運は尽きた
↓ 噛みついている、麻酔中?
↑ ・・・という原稿を書いていたのだが一緒に観察していたHenk氏(動画に声が聞こえてます)から、「麻酔は噛みつきではなく、尾端の針だった」との指摘を受けた。こちらからは見えない角度であったが反対側にいた氏の撮った写真にははっきり尾端の針を刺そうとしているアナバチが写っている、すごい!
↓ 処置が終了したらしく、ハチが離れて逃げもせずにぐったりしている被害者
↓ セナガアナバチ (アーカイブ 2024年6月9日 生田緑地)
↓ 蛇足 ウソのような本当の話。帰宅して2畳の書斎で撮影画像の整理をしていたら、なんと同じくらいの大きさのゴキブリが目の前を走った。マンションの5階なのでゴキブリ自体年に1回出るか出ないかくらいだが書斎では初めての経験。さっそく非常時用の「ホイホイ」を仕掛けた。こちらはフェロモンを利用した文明の利器だろうが、セナガアナバチと比べると残酷度は低いかな?
↓ 以下はWIKIPEDIAの一部抜粋: ⇒ 但しセナガアナバチに近いエメラルドゴキブリバチの説明
1940年代の初頭には、本種(エメラルドゴキブリバチ Mats注)の雌がある種のゴキブリを2回刺し、毒を送り込むことが報告されていた。2003年に行われた放射性同位体標識による追跡実験では、本種がゴキブリの特定の神経節を狙って刺していることが報告された。1回目の刺撃では胸部神経節に毒を注入し、前肢を穏やかかつ可逆的に約5分間麻痺させる。これは、より正確な照準が必要となる2回目の刺撃への準備である。2回目の刺撃は脳内の逃避反射を司る部位へ行われる。この結果、ゴキブリは30分ほど活発に身づくろいの動作を行い、続いて、正常な逃避反射を失って遅鈍な状態になる。
続いて本種はゴキブリの触角を2本とも半分だけ噛み切る。この行動は本種が自分の体液を補充するため、もしくはゴキブリに注入した毒の量を調節するためと考えられている。これは、毒が多すぎるとゴキブリが死んでしまって新鮮な餌でなくなる一方、少なすぎると逃げられてしまい、産みつけた幼虫が成長するための生餌が無くなってしまうからである。本種はゴキブリを運ぶには身体が小さいため、ゴキブリに半分だけ残した触角を引っ張ることで移動を促し、ゴキブリが自力で本種の巣穴へと足を運ぶよう誘導する。巣穴の奥深くに着くと、本種はゴキブリの前肢の基部に長径 2mmほどの卵を産みつける。その後、巣穴から出た本種は入り口を土や小石で塞ぎ、ゴキブリが他の捕食者に狙われないようにする。本種の親の役目はこの段階で終わり、次の宿主となる個体を探すために飛び去る。
逃避反射が機能しなくなっているゴキブリは、緩慢な動きで身づくろい程度の行動しかとらなくなっており、本種の卵が孵るまでのおよそ3日間、巣穴の中で何もせずに過ごす。孵化すると、芋虫のような姿の幼虫はゴキブリの腹部を食い破って体内に侵入し、これを食べながら4 - 5日の間は捕食寄生生活を送る。8日間、幼虫はゴキブリが死なない程度に内臓を食べ続け、そのまま体内で蛹化する。ゴキブリはこの段階になってようやく死ぬ。換言すれば、幼虫は生きたゴキブリを利用できるぎりぎりの段階まで肉として生かし続け、食べることをしない蛹の段階に入ると生かしておく必要が無くなり、ゴキブリは死ぬ。さらにはこの後、動けず完全に無防備な状態である蛹の間の4週間を、ゴキブリの死骸の硬い外骨格に守られてすごす。最終的に変態を遂げた本種はゴキブリの体を食い破り、外へ出で成虫としての生活を送り始める。一連の成長は気温の高い時期ほど早い。成虫の寿命は数か月である。交尾は1分ほどで終わり、雌は1回の交尾でゴキブリに数ダースの卵を産みつける。