寄生バチ ミドリセイボウの輝き(2)
美しき寄生バチ:ミドリセイボウの続きです。
ここまで美しくする必要があったのか?と不思議になるが、この寄生バチはヤマトルリジガバチというハチに寄生することでしか生きてゆけないという数奇な運命を背負っている。
↓ 藁束の黒っぽい詰め物は? ヤマトルリジガバチ(以下、ジガバチ)はクモを狩っては麻酔状態の生き餌として筒内の巣に運び込み、クモに産卵したのちに筒の先端を塞いでしまう。検索してみると基本的にはフタは鳥の糞などを利用する結果、「白い」とのことだったが、写真のように「黒い」ことがあるという説もあり、実際に周辺にジガバチはいたが白いフタは見つからなかった。
ミドリセイボウはジガバチの巣の周辺で張っていてスキを見つけて巣内に侵入し産卵し、孵化して出てきた幼虫は、宿主のジガバチの幼虫、卵、親ジガバチが運び入れたクモを食べて生長する。尚、運悪く侵入時に宿主のジガバチに見つかったとき(泥棒というより押込強盗という方がふさわしい・・)のセイボウの防御方法についてフランスのサイトに面白い記事があった。即ち、クルリと体を丸めてボール状になると、甲殻が硬いため宿主は結局歯が立たず攻撃を諦めて巣から転がして蹴落とすしかないとのこと。
⇒ そのサイト guêpes-coucou (写真が美しい)
↓ ヤマトルリジガバチが捕えたクモ(わかりにくいが)をくわえて巣に運び入れようとしている。腰部の細さ!
↓ 周囲にセイボウが何匹か張っているのでおそらく気が気でなく悶々とするジガバチ(勝手な想像)
カッコウが托卵といって他の鳥の巣に卵を産みつけその鳥がカッコウの卵を育てる事が知られていてセイボウも同様であることからカッコウバチ(英:Cockoo wasps、仏:Guêpes-coucou Cockooもcoucouもカッコウの意)と呼ばれる。ただ似ているのは他の鳥の巣に産卵するところだけで、セイボウのように宿主の卵、幼虫、エサまで食べてはしまわない。
脱線ついでに、カッコウはホオジロ、オナガ、オオヨシキリなどに託卵するが、他にホトトギスがウグイスに託卵する例も知られている。《トウキョウトッキョキョカキョク!》と鳴くホトトギスが、《ホーホケキョ!》と鳴くウグイスに子育てを「任せる」というより「ぶん投げる」のはいかなる理由なのだろう?? あらゆる生き物にとって種属保存が何よりの優先課題とするとちょっと理解を超えている。
↓ ヤマトルリジガバチにとっては手ごわい天敵 ミドリセイボウ
驚くべき生態ですね。ジガバチとセイボウの丁々発止のやりとりは非常にスリリングで、まるでエイリアンの映画を見ているようです。単なる記述でなく、このように臨場感溢れる写真で示しながら説明してもらいましたので、私などが知らなかった大自然の驚異というものをつくづく感じました。
taka さん
コメントありがとうございます。
これまで殆ど撮る機会に恵まれませんでしたが、今回は纏めて撮影できました。こんな世界にはまり込むと次から次へと興味が尽きません。
私たちから見て「美しい」というのは、同じハチから見て、また、他の昆虫や、鳥にとってどんな意味があるのか? どうやって宿主のヤマトルリジガバチを識別するのか? まさに、大自然の驚異ですね。